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数学bot (https://twitter.com/mathematics_bot) の解答を作ってみるブログ。 投稿されたオリジナル問題を中心に。各出題者ごとの問題採番はバルム氏のまとめ(http://balm.web.fc2.com/mathmatics.pdf)に準じています。
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なめらかな関数f(x)について、g(x)を以下のように定める:g(x)=f(x)+f'(x)+(1/2)f''(x)+…+(1/n!)f^(n)(x)+…このとき、g(x)=f(x+1) を示せ。f^(n)(x)はfのn回導関数である。(amoO_O様)

## 実はこの命題は偽である。
## よって「反例を1つ挙げ、それが実際に反例となっていることを示せ」と読み替えて解く。


この命題は偽である。

関数 f(x) = e^(-1/x^2) (x≠0), 0 (x=0) はなめらかではあるが g(0)≠f(1) となり、
命題に対する反例となることを証明する。


まず、f'(x) を計算する。
x≠0 においては f'(x) = 2/x^3 e^(-1/x^2)

x=0 において f'(0) = lim [h→0] e^(-1/h^2) / h が存在するかどうかを考える。
h を微小正数とすると 1/h は十分大きな数であるので 0 < 1/h < e^(1/h)
0 < e^(-1/h^2) / h < e^(-1/h^2) e^(1/h)
ここで e^(-1/h^2) e^(1/h) = e^{(h-1)/h^2} → 0 なので
はさみうちの原理より lim [h→+0] e^(-1/h^2) / h = 0

h を微小負数とすると -1/h は十分大きな数であるので 0 < -1/h < e^(-1/h)
- e^(-1/h^2) e^(-1/h) < e^(-1/h^2) / h < 0
ここで - e^(-1/h^2) e^(-1/h) = e^{-(h+1)/h^2} → 0 なので
はさみうちの原理より lim [h→-0] e^(-1/h^2) / h = 0

したがって、f'(0) = lim [h→0] e^(-1/h^2) / h = 0 である。

まとめると、f(x) は微分可能で、
f'(x) = 2/x^3 e^(-1/x^2) (x≠0), 0 (x=0)


次に、f''(x) を計算する。
x≠0 においては f''(x) = (4/x^6 - 6/x^4) e^(-1/x^2)

x=0 において f''(0) = lim [h→0] 2/h^3 e^(-1/h^2) / h が存在するかどうかを考える。
h を微小正数とすると 1/h は十分大きな数であるので 0 < 1/h^4 < e^(1/h)
すなわち 0 < 2/h^3 e^(-1/h^2) / h < 2 e^(-1/h^2) e^(1/h)
2 e^(-1/h^2) e^(1/h) = 2 e^{(h-1)/h^2} → 0 なので
はさみうちの原理より lim [h→+0] 2/h^3 e^(-1/h^2) / h = 0
lim [h→-0] 2/h^3 e^(-1/h^2) / h = 0 も同様に示せるので、f''(0) = 0

まとめると、f'(x) はさらに微分可能で
f''(x) = (4/x^6 - 6/x^4) e^(-1/x^2) (x≠0), 0 (x=0)


以下、同様の証明を繰り返すと f(x) は全域で無限に微分可能ななめらかな関数であり、
任意の自然数nに対して f^(n)(0) = 0 であることが帰納的に証明できる。

よって、g(x) は x=0 において全項が0となるので g(0) = 0

一方で f(1) = 1/e なので g(0)≠f(1) となり、命題に対する反例となることが示された。



おまけ:

----------------------------------------------------------------------

a を定数として、g(a)=f(a+1)を示す。

f(a+1) - f(a) = ∫[t:a→a+1] f'(t) dt より

f(a+1) = f(a) + ∫[t:a→a+1] f'(t) dt
    = f(a) + [-(a+1-t)f'(t)] [t:a→a+1] + ∫[t:a→a+1] (a+1-t)f''(t) dt
    = f(a) + f'(a) + [- 1/2 (a+1-t)^2 f''(t)] [t:a→a+1] + ∫[t:a→a+1] 1/2 (a+1-t)^2 f'''(t) dt

以下同様に部分積分を繰り返すと

    = f(a) + f'(a) + 1/2 f''(a) + …… + 1/(n-1)! f^(n)(a) + ……

これは任意の定数 a で成立するので、変数 x に書き換えてもかまわない。
よって

f(x+1) = f(x) + f'(x) + 1/2 f''(x) + …… + 1/(n-1)! f^(n)(x) + ……
    = g(x)

----------------------------------------------------------------------

というのがおそらく出題者の意図した解答であろうが、この論理は欠陥がある。
部分積分を繰り返した場合に、最後の積分項が n→∞ で 0 に収束しなければ
この無限級数の形に表現することはできない。
例えば、f(x) = e^(-1/x^2) (x≠0), 0 (x=0) について f(0+1) を展開した場合は、
何度部分積分しても最後の積分の値が 1/e のままであり、
無限に続けたとしてこれを削除すると左辺と右辺で 1/e だけ値が食い違ってしまう。
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